「ダウの犬」投資法とは?

2020年最新銘柄や日本株への応用方法など、利回り重視のポートフォリオ概要を解説します。

「ダウの犬」投資法とは、
NYダウを構成する優良な高配当利回り銘柄だけでポートフォリオを組む投資方法のことです。

投資文化が根付く米国で生まれた長期投資に最適な「ダウの犬」投資法の概要と、日本株への応用の仕方を解説してみます。

(1)「ダウの犬」投資法とは?3ステップでやり方を解説

ダウの犬投資法に則ってポートフォリオを組むのは簡単で、3ステップできます。
手順を覚えてしまえば、手間のかかるファンダメンタル分析やテクニカル分析も必要ありません。
銘柄を決めて購入してしまえば、その後は一般的な株式投資と違って日々の株価変動に一喜一憂することもないのです。

専門知識不要で手間いらずの投資法なので、株式投資初心者でも比較的簡単に実践できます。
3ステップは以下のとおりです。

【ステップ1】30銘柄の配当利回りを算出
12月31日時点の株価で、NYダウを構成する30銘柄の配当利回りを算出し、配当利回りが高い順に並べます。
上位10銘柄でポートフォリオを組んで、年初に10銘柄をそれぞれ同じ金額で一括購入します。

【ステップ2】配当利回りが高い順に並べてトップ10を購入
1年後の12月31日時点の株価を基準にして、再度NYダウ30銘柄を配当利回りが高い順に並べて、上位10銘柄とステップ1で選択した10銘柄とを比較します。
年初に上位10銘柄から外れた銘柄を売却し、新たに加わった銘柄を購入します。

【ステップ3】年に一回リバランス
以降1年ごとに②を行い、ポートフォリオのリバランスを行います。

ここでは高配当利回りの10銘柄を選ぶ基本戦略を紹介しましたが、
他にも5銘柄のパターンや1銘柄のパターンもありますので、
運用資金に応じて使い分けるといいでしょう。

(2)「ダウの犬」投資法の3つのメリット

ダウの犬投資法のメリットを端的にまとめてみました。

【メリット1】 ー ダウの犬銘柄の安全性の高さ
ポートフォリオはすべてNYダウ構成銘柄で、長年にわたって成長を持続し、増配が続いている企業ばかりです。
業績や財務状況などの健全性も高いので、安心して投資でます。

【メリット2】 ー 専門知識がなくても投資判断が可能
初めての方は少し小難しく感じるかもしれませんが、そもそも投資方法としてはシンプルであり、このことは大きなメリットです。
この投資法に則れば、高度な専門知識がなくても取引できるわけです。

【メリット3】 ー 忙しい人でも始められる
ポートフォリオを組んだら放置し、1年に1度だけリバランスするだけなので、忙しい人でも気軽に取り組めるのも大きなメリットです。

(3)「ダウの犬」投資法の4つのデメリット

ダウの犬投資法にも、デメリットはあります。
以下の点を考慮して、ダウの犬投資法を実践するかどうかを判断してください。

【デメリット1】無配の成長株だと、ダウの犬銘柄には組み込まれない
2020年12月時点では、NYダウ30銘柄に無配銘柄はありません。
しかし成長著しい企業では、利益の大半を設備投資や研究開発費などに回すために、配当を実施しないことがります。
今後NYダウにIT系などの新興成長株が採用されても、配当を実施していなければダウの犬銘柄としてポートフォリオに組み入れることができません。
つまり「NYダウを構成する優良な高配当利回り銘柄だけでポートフォリオ」を採用する、この方法だけで投資をしていると、手に入るかもしれない大きなキャピタルゲインを逃してしまう可能性があります。

たとえば、NYダウ構成銘柄のシスコ・システムズは2010年まで配当を実施していませんでした。
(※利益を再投資に充てるための無配でしたが、2011年以降は増配を継続しています。)

【デメリット2】深刻な財政悪化が続く場合、パフォーマンスが伸び悩む
高配当利回りであっても、個別銘柄で経営基盤が揺らぐほどの財政悪化が続いている場合、ダウの犬銘柄全体のパフォーマンスが低迷することがあります。

【デメリット3】NYダウの値上がり率のほうが、ダウの犬銘柄の値上がり率を上回ることも
株式市場全体が上昇基調にあるとき、ダウ工業株30種の株価の値上がり率のほうが、ダウの犬銘柄全体の値上がり率を上回ることがあります。

【デメリット4】大型の優良銘柄なので、投資金額がかさむ
ダウの犬投資法で選定される銘柄は大型の優良株ばかりなので、株価が高いものが多いです。
10銘柄にそれぞれ同じ金額を一括投資するので、投資金額が大きくなりやすいです。

(4)ダウの犬投資法が投資初心者に向いている3つの理由

ダウの犬投資法が投資初心者に適しているのは、ある意味で株式投資の王道だからです。
その理由を説明していきます。

【理由1】対象は大型の超優良銘柄ばかり
ダウの犬投資法の対象は米国を代表する株価指数「NYダウ」を構成する30銘柄であり、IBM <IBM>、エクソン・モービル<XOM>、ファイザー<PFE>など世界的に有名な大企業ばかりです。

NYダウは「ダウ工業株30種平均」とも呼ばれ、米国のダウ・ジョーンズ社がNY証券取引所やナスダック上場企業のうち、大型の優良銘柄を30銘柄選出し、ダウ式修正平均によって算出した指数です。

選定にあたっては、以下のような厳しい基準が設けられています。
米国本社で世界を代表する大型株で、誰もが社名を知っていること
継続的に成長していること
株価が一定の範囲以内であること(算出方法が単純平均指数であるため)
公共関連銘柄を工業30種から除外すること
つまりNYダウを構成する30銘柄は、いずれも規模や業績、財務状態などの面で安全性の高い超優良株なので、どの銘柄を選んでも倒産のリスクなどは極めて低いと考えられます。

「実体の伴わない相場は長続きしない」という投資格言があります。
ダウの犬投資法は、業績が好調な銘柄に投資するべきという投資の基本に適った戦略なのです。

【理由2】ダウの犬10銘柄は、高配当利回り=割安株である
ダウの犬10銘柄は、配当利回りの上位銘柄であることも大きなポイントだといえます。
配当利回りは、以下の計算式で算出されます。

配当利回り(%)=年間配当金額÷株価×100

つまり「高配当利回りである」ということは、1株当たりの年間配当金額に対して株価が相対的に割安であることを意味します。

ダウの犬投資法は、「良い品質のモノをお値打ちに買う」ことだと言ってもいいでしょう。

【理由3】ダウの犬投資法は、逆張り戦略の一種
この投資手法は、1年ごとにポートフォリオをリバランスするのが前提になっています。
その時株価が安い銘柄を買って、配当を確保しながら株価が回復したら売却し、また別の安い銘柄に乗り換えることで利益を確保する手法でもあるからです。

(5)「ダウの犬」投資法の誕生とその意味、過去の実績と銘柄

「ダウの犬(Dogs of the Dow)」は、1991年に米国の資産運用会社を経営するトップマネージャーのマイケル・オヒギンス氏によって提唱されました。

「ダウの犬」の意味
名前にある「Dogs」は、米国株式市場では「株価が安いこと、パフォーマンスが悪いこと」または「負け犬」を意味します。
株価が安い銘柄を購入する戦略であることから、このように命名されたとのことです。

「ダウの犬」の過去実績
ダウの犬10銘柄とNYダウ30銘柄それぞれの、直近10年間の年間騰落率を見てみましょう。

※2010年~2017年の年間騰落率の数値は、SBI証券ホームページ「特集レポート」
資料(2018年4月18日付)から引用
※2018年と2019年の年間騰落率は出典著者が株価参照の上算出

直近10年間のうちで、ダウの犬銘柄の平均年間騰落率がNYダウの年間騰落率を上回ったのは10回中、6回でした。
この期間は、ダウの犬銘柄のパフォーマンスのほうがNYダウのパフォーマンスをやや上回っていたと言えます。

2018年のダウの犬銘柄の大幅下落は、ゼネラル・エレクトリック<GE>の株価下落が止まらず、ダウの犬全体のパフォーマンスを下げたことが主な要因です。

<2020年のダウの犬10銘柄 入れ替わった銘柄は?>

2020年版ダウの犬銘柄は、前述のとおり2019年12月31日終値ベースで算出された配当利回りで選定されたものです。

※2020年版ダウの犬銘柄および配当利回りについては「Dogs of the Dow」公式ホームページを参照

2019年版ダウの犬銘柄であったJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー<JPM>、プロクター・アンド・ギャンブル<PG>、メルク<MRK>の3社は、2018年から2019年にかけて株価が上昇トレンドに乗っており、その結果配当利回りが下がって2020年版ダウの犬銘柄から外れています。

それらに代わって2020年版ダウの犬銘柄に加わったのは、ダウ<DOW>、3M<MMM>、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス<WBA>の3社です。

年初から5月21日までの、2020年版ダウの犬銘柄とダウ平均株価指数の騰落率を比べると、ダウの犬銘柄群の平均は-19.70%と大幅に下落しているのに対して、ダウ平均株価指数の騰落率は3.98%のプラスになっています。

ダウの犬銘柄とダウ平均株価指数の騰落率に開きが見られるのは、投資対象が10銘柄のダウの犬投資法と、30銘柄を対象にしたダウ平均株価指数とでは、有事の際のリスク分散効果が違うからです。

2020年2月以降、新型コロナウイルス感染拡大が社会や経済に深刻なダメージを与えており、2020年版ダウの犬銘柄10社の株価も影響を受けています。

ここで注意したいのは、ダウの犬投資法は長期投資を前提とした投資法であることです。新型コロナウイルス感染拡大の影響は短期的に上値を抑える要因だが、リバランスしながら10年、20年と保有し続けることでトータルリターンを確保できるようになります。

(6)日本株版ダウの犬投資法「TOPIX Core 30 ハイイールド投資法」 ポートフォリオの内訳は?

ダウの犬投資法を日本株で応用するなら、NYダウに似た株式指数を探す必要があります。
日本の株価指数の中で、業績好調な大型株を構成銘柄とするNYダウに最も近いのは、ニューインデックスシリーズの一つである「TOPIX Core 30」だと思われます。

TOPIX Core 30の構成銘柄の基準は、「東証一部上場全銘柄のうち、時価総額と流動性が特に高い30銘柄」と定められています。
市場の実勢をより適切に反映させるために、1年に1回10月に構成銘柄の見直しが行われています。

このTOPIX Core 30の構成銘柄を、以下の手順で取引するだけです。
設定した基準日終値ベースで配当利回りの高い順に並べます
上位10銘柄でポートフォリオを組んで購入
1年後に、リバランスされた構成銘柄で再度配当利回りが高い順に並べます
上位10銘柄から除外される銘柄を売却
新しく入った銘柄を購入
その後、1年に1回同時期に銘柄の入れ替えをします
参考までに、2020年5月21日終値ベースのTOPIX Core 30銘柄の配当利回り上位10銘柄を挙げておきます。

※1.予想配当利回り(%)は、「今期の1株当たりの年間配当金額÷2020年5月21日終値×100」で算出
※2.新型コロナウイルス感染拡大の影響が予測できないため、ホンダは決算発表時点では2021年3月期1株当たり配当金額を開示していません。
そのため、今期の1株当たり配当金額(予)は、2020年3月期1株当たり配当金額を据え置きしたものと仮定しました。

日本株の取引単位は単元株(100株)であり、上記からもわかるように、1単元ずつ10銘柄を一度に購入するには、多額の資金が必要になります。
そこで、少額でもダウの犬投資法にチャレンジできる方法を紹介します。
厳選5銘柄投資法――対象10銘柄のうち、株価の安い5銘柄に投資
米国のダウの犬投資法には、少額投資戦略として「Small Dogs of the Dow(ダウの子犬)」があります。
ダウの犬対象10銘柄のうち、株価の安い5銘柄を選んで投資する方法です。対象銘柄が5銘柄、それも株価の安い銘柄でポートフォリオを組むので、投資金額が少額で済みます。

これは、TOPIX Core 30ハイイールド投資法にも適用できます。
方法は簡単で、対象10銘柄から最低投資金額が少ない5銘柄を選ぶだけです。

2020年5月21日終値ベースでの厳選5銘柄投資法対象銘柄は、JT<2914>、キヤノン<7751>、みずほフィナンシャルグループ<8411>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、三井物産<8031>の5銘柄となります。

(7)「ダウの犬」投資法はお手軽で確実な長期投資戦略

ダウの犬投資法で株式投資をすると、比較的安全で、手間をかけないマイペースな投資スタイルをキープできます。
高配当利回り銘柄なので、ほぼ確実に配当がもらえるのも魅力です。

割安な大型株を購入するので、株価が上昇して売却すれば売却益が出ます。
それを原資に買い増しもできるわけです。

日本株でも応用できるダウの犬投資法は、投資初心者にも多忙な人にも、堅実なリターンをもたらしてくれる戦略と言えるでしょう。

出典:https://moneytimes.jp/investment/detail/id=5143

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