日本人は投資が苦手!?
日本人の個人資産をまとめると1800兆円ほどになるらしい。
しかもコロナ禍のカネ余りでさらに増え続けている。
そのうちの約52%が預貯金に預けられていることから
「日本人は貯蓄好きな国民」とよく言われる。
外国のデータと比べてみても、
ドイツ、フランス、英国など欧州先進国の預貯金の率は20〜30%台であり、
米国は13%しかない。
この数値などを見ると、日本人が投資と距離をおいていると言われる所以でもある。
ただし、
果たして投資が嫌いなのかというと、
そうとも言い切れない。
暗号資産(仮想通貨)が大きな話題となった。
為替市場には多数の個人投資家の存在がある。
一方では投資を敬遠し、
その一方でハイリスクの投資を選好する。
つまり、
多くの人は、預貯金もしくは預貯金に準ずるような投資商品でしか運用をせず、
リスクが取る覚悟をした一部の人が、ハイリスク投資を行っているという二極化が見て取れる。
※預貯金に準ずるような投資商品について解説すると、
・個人向け国債に代表される債券投資
・インデックスファンド(指標連動型の投資信託)
・企業の株式を配当や株主優待を目的に保有
などが挙げられる。
この二極化は、
本来の投資の空洞化とも言える現象である。
つまり世界経済の成長や個別企業の株価上昇を目論んだ中長期投資ではなく、
安心感や目先で少額のメリットを享受しようという志向と
一発当てようというハイリスク投資の二極にしか目が行っていてないと言える。
日本人の投資感覚はどこかいびつで、
世界的に見ても珍しいのかもしれない。
得意・不得意(苦手)というより、
投資をする必要がなかった結果として預貯金での運用が主流になってしまっている⁉
時代を振り返ると、
日本では、
団塊世代より上の人たちは、個人で積極的に投資する必要なかったとも言える。
というのは、
手厚い年金制度があり、
終身雇用に伴う退職金があったため、
自分で資産形成しなくても国と会社が老後の面倒をみてくれる社会だったのである。
一方、欧州や米国にはそういった環境がなかった。
欧州の福祉国家は医療や年金といった支えが充実しているが、
日本のような終身雇用制度はありません。
米国にも終身雇用制度はなく、
オバマケアの法改正が行われるまで医療保険も個人の選択制だった。
欧米の人たちは、
人生設計の大前提として、
自分で資産を作り、備えないといけない社会で生きている。
環境が違えば行動も変わる。
日本人が預貯金を選び、
投資を遠ざけてきたのは、
わざわざ投資のリスクを取らなくても安定した人生を送れたからなのである。
「投資が必要ない時代」は、かれこれ数十年続いた。
その結果、投資はますます日本人と見ている。
国全体として何十年にも渡って投資と距離をおいてきたため、
投資に関する知識やノウハウが蓄積されていないという現実もある。
最近は投資に興味を持つ人も増えつつあるが、
何をしてよいかわからず、
誰に相談すればよいかもわからないというのが実態ではないかと思われる。
周りを見渡してみても、
職場などで投資や運用の相談をする人は少ない。
お金に関することは家族ともあまり話さないという人も多いのではないか。
その点、
投資が身近な米国は様子が異なる。
外資系企業に勤めていると、
前日のアメフトや野球の話をするような感覚で同僚と投資の話をする。
企業によっては、
会社の福利厚生として資産運用の相談ができ、
資産が少ないときからプライベートバンクのサービスが受けられる場合もあるという。
家庭環境の面でも、
親世代が何かしらの投資資産を持っていることが多いため、
投資そのものが身近であり、
何をすればよいかがだいたいわかる。
対照的な日本人が明日から急に同僚と投資の話ができるかというと、
それもなかなか厳しいだろう。
投資と距離をおく期間が長引いたことで、
「お金のことは他人に話さない」という文化も醸成された。
そこで多くの人が頼ったのがインターネットである。
ネット上に溢れている投資関連の情報を参考にしながら、
1人1人が孤立した状態で手探りで投資する。
そういう環境が出来上がりつつある。
とはいえ実情はといえば、
ネットは情報の洪水である。
投資の手法は無限にあり、
その時々の経済状況などによって最適な方法も変わりますから、
調べるほどわからなくなり、
途方に暮れている人も多いのでは。
投資関連の情報は、
なんでも答えてくれるGoogleですら明確な答えが出せない珍しい分野なのである。
投資が普及しなかった要因として、
国内経済が不調だったことも挙げられる。
いわゆる「失われた30年」の影響である。
日経平均株価を例にすると、
80年代のバブルが崩壊した後の株価は2万円2000円前後。
それから30年経った今になってようやく株価は3万円近辺まで戻してきました。
長期分散で買っていけば多少のプラスにはなりますが、
単純に見れば、
数年前まで投資していたとしても儲からなかった。
しかも、
30年間運用したとして、
その半分以上の期間は含み損に耐えている状態だ。
これは精神的に辛い。
それなら元本割れリスクがほぼない郵便局の積立預金の方がはるかに合理的だ。
経済そのものが成長し、
増加分を投資家たちで分け合うことが投資の基本的な考え方であるとすれば、
国内経済が成長しなかった「失われた30年」は投資しても仕方がない市場であり、
投資が普及しないのも当然の結果と言える。
また、
経済が成長しなかったことで、
市場は「みんなで利益を分け合う場」から
「お互いからお金を奪い合う場」に変わったとも言われている。
経済成長がなければ投資家が分け合うリターンも生まれず、
市場で勝てるのは安く買って高く売れる人に絞られた。
投資の初心者の方は特に、
高く買って安く売ってしまうこともあり、
そのような奪い合いの環境が投資は怖いというイメージを生み出すことになったといえる。
その結果、
ある人は「投資はしない」と考えた。
一方には、
「どうせリスクをとるなら、うまくいった時のリターンが大きい方がいい」
と考える人たちもいた。
こうして、
国内の資産運用は、
預貯金のみで運用する保守的なグループと、
ボラティリティ(値動きの幅)が大きいハイリスク投資に参加する積極的なグループに二極化した。
経済成長に乗り、
恩恵を分け合うという本来の投資の姿から遠ざかったのである。
気づけば米国型の社会になっていた
では、そのような状況の中で、
我々はどのように投資と向き合って行けばよいのだろうか。
環境の面から見ると、
近年の日本では転職が珍しくなくなり、
かつての終身雇用制度が崩壊しつつある。
今後の年金制度を疑問視する声もあり、
預貯金だけでは老後が成り立たないと不安に感じている人もいる。
年金と終身雇用が「投資しなくてよい理由」であったとするならば、
その姿勢も変えていかなければいけないだろう。
年金については、破綻はせずとも、
受給開始年齢が繰り下げられたり受給額が減ったりする可能性は十分考えられる。
また退職金に関しては、
仮に大卒で企業に就職し、
定年まで働いたとしても、
1000万円くらいしか受け取れないのではないかという話もある。
しかも、
大卒・定年まで働くという条件を満たす人は労働者全体の中で圧倒的少数であり、
条件がどれか欠ければ、
退職金の額はさらに少なくなる。
そう考えると、
もはや「嫌い」「苦手」「怖い」といった感情で投資を遠ざけている場合ではないのかもしれない。
日本人はいま、
欧米のような社会を生きている。
投資をうまく使い、
自分で自分の資産を作っていくことを大前提とする社会だ。
データを見る限り、
国と会社に期待するのは大きなリスクだといえる。
労働環境や社会保障制度といったマクロ環境を見ると、
今の日本は欧州を飛び越え、
米国に近い状況なのだ。
ところで、
コア・サテライト運用という言葉を聞いたことがあるだろうか。
投資資金を主軸となるコア(核)と、
それ以外のサテライト(衛星)に分けて構成するもので、
ポートフォリオを組む際の基本的な戦略として世界に広く知られている方法である。
それぞれの役割としては、
まずコアの資金は安定的な成長が見込める銘柄などに投資し、
じっくりと資産を増やす。
コアの部分は長期のグローバル分散投資が前提となり、
大きく増やすことはできないが、
大きく減らすリスクも小さい。
一方、
サテライトの資金はその時々の市況などに合わせてリターンが狙える銘柄などに投資する。
例えば、新興国や中小型株への投資はサテライトの部分で、
短期で大きく増やせる可能性があるが、
その分、減る可能性も大きくなる。
コアを「守り重視の運用」、
サテライトを「攻め重視の運用」と分けてもよいだろう。
長期で安定的に資産を増やしていくためにはコアに重点をおいたポートフォリオ(資産配分)を組むことが重要
資産をコアで長期運用するのが特徴だ。
なぜコアに絞っているかというと、
そこが日本の投資市場に欠けている部分であるからだ。
日本の投資市場はサテライトの商品が充実し、
投資家の多くもサテライト中心の投資をしています。
例えるなら、
メインディッシュ(コア)と
サイドディッシュ(サテライト)が
逆転しているような状態です。
さらに最近はFXや暗号資産(仮想通貨)といったハイリスク・ハイリターンの投資に目を向ける人も多く、
食卓の上にサイドディッシュとスパイスだけ並べているような投資家も多いと例えることができる。
このような現状を踏まえて、
溢れる情報の中から、
あなたに適したリスクを判断し、
重要な分散投資効果が大きく、
長期のグローバル投資が実現でき、
コア投資となる金融商品を指南してくれるプロが必要ではないだろうか?
お金持ちもビギナーも基本戦略は同じ
メインはあくまでもコアである。
具体的には、
長期の分散投資を前提として、
グローバルな市場でタイプが異なる商品に投資する。
なぜこの方法で資産が増えるかというと、
グローバルに分散投資することにより、
世界の経済成長の恩恵が受けられるからである。
ここ20年くらいの推移を見ても、
例えば中国経済が発展し、
ASEANやインド、アフリカなどもその後を追っている。
世界経済が成長した分の一部は、
投資家がリターンとして分け合うことができるため、
世界経済が成長している限り、
長期のグローバル分散投資をしている投資家も継続的に利益が得られる。
また、
フランスの経済学者であるトマ・ピケティによると、
資本主義社会においては、
株や不動産などから生まれる利益(資本収益率、r)は、経済成長率(g)よりも大きくなる。
つまり、
r>gという構図が成立するため、
株などに投資している人は、
世界経済の成長を上回るリターンが得られる。
コアとサテライトの比率は、
その時々の経済状況や投資する人の年齢などによって変えてよいと思いますが、
最低でも75%以上はコアに投資した方がよいと思われます。
実は、
世界的に見てもコアを主とする投資は一般的で、
富裕層も同じようなポートフォリオで運用しているケースが多い。
投資の手法は様々だが、
資産が5億円の富裕層でも、
10万円からスタートする投資のビギナーでも、
数学的に見た場合のポートフォリオは基本的には同じようなものになると考えられている。
基本的に同じポートフォリオになる特徴は、
コアで重要なのはグローバルに投資するという点だ。
実はここが難しい。
というのは、
人はどうしても「知っている会社」や
「自国の企業」に安心感を持つため、
見知らぬ国や、
知らない企業への投資はハードルが高くなるのだ。
投資先候補としてトヨタ自動車とアリババがあったとしたら、
仮にアリババの方が成長率が高かったとしても、多くの日本人がトヨタを選ぶ。
このようなホーム・バイアスの心理が働くため、
グローバル投資という視点を失ってしまいやすい。
別の例えをすると、
オーストラリア株は、
世界の株式市場の数パーセントしかない。
しかし、
オーストラリアの投資家は半分以上の資産をオーストラリア株に投資し、
同国の年金ファンドもオーストラリア国内の商品で運用している。
客観的に見ればバランスが悪いことが一目瞭然だが、
オーストラリアのことを笑ってはいられない。
国内のみに投資している日本人も、
他国の投資家から見れば同じような状態なでしかない。
また、
ホーム・バイアスにとらわれることでリターンも限定的になる可能性がある。
時代を振り返ると、
国内バブルが崩壊した1992年ごろまで、
国内の名目GDPは横ばいで、
株価もようやく当時の価格に戻ったところです。
一方、
この30数年の間に世界全体の名目GDPは約25兆ドルから約75兆ドル、実に3倍規模に成長しました。
つまり、
ホーム・バイアスにとらわれてしまっていれば、
世界経済の成長に乗りそびれてしまったのである。
もっとも、
90年代当時は世界に投資する機会がほとんどなかった。
企業の海外進出や新興国などへの投資が活性化したのもここ10年くらいのことだし、
投資先進国と言われる米国でも、グ
ローバル投資が本格的に普及しはじめたのは2000年に入ってからだ。
ただ、同じミスは避けられる。
世界経済が過去25年間で3倍に伸び、
国内経済が横ばいで推移しているということは、
世界経済に占める日本の割合が小さくなっているということ。
実際、
1992年当時の日本経済は世界のGDPの1割以上を占めていましたが、
今は6%ほどに縮小している。
世界経済の成長に乗るという点からみると、
コアの投資配分を考える際にも、
世界に投資する比率を増やし、
国内投資の比率を下げるのが正しい判断であろう。
では、サテライトについてはどう考えればよいのだろうか。
サテライトの分野では、
例えば、IoT、五輪、環境、シェールガスなど、
その時々で注目される市場が変わる。
国別で見ても、
インドに資金が集まるときがあれば、
アフリカに集まるときもある。
サテライトの投資では、
まず注目される市場かどうかを見極めることが大事で、
誰も注目していない時に買う勇気も必要です。
さらに、
安く買って高く売ることがサテライトの利益獲得の肝ですので、
その精度を高めていくために、
市場や銘柄のリサーチとタイミングを図るためなどに時間をかけなければならない。
その視点から見ると、
日中忙しくしている会社員には難しい。
また、
リサーチなどにかけられる時間があったとしても、
趣味や家族のために使う時間を優先したいという人もいるのではないか。
自分にとって大切なことに時間を使う。
本業に集中するとともに、
安定運用が見込めるコア投資を軸として資産運用にかかる負担をなるべく軽減する。
それが理想的な投資環境なのかもしれない。
そう考えると、
時間と労力と神経を使うサテライトへの投資は全く逆の位置にあるとも言える。
投資は、
効率よく資産形成する有効な手段の1つですが、
すべての人が専業投資家になろうというわけではないですよね。
また、
長期投資をしていると『複利効果』が働き、
“利益が利益を生む”ということが期待できるので、
1日でも早く始める方がよいのは事実なのだが、
若い人の場合は市場より自分に投資した方がよい場合もある。
確かに、自己投資も重要だ。
「長期積立分散」投資では、
平均して年4%のリターンが得られるかもしれないが、
そのお金を資格やスキルアップに使えば、
中長期的に収入が増えるかもしれない。
自己投資のリターンは年齢が上がるとともに低くなる傾向があるが、
若ければ若いほど、
市場に投資する以上のリターンに結びつく可能性は高くなる。
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